額の架け替え

 去る8月3日、道場の額の架け替えをしました。

 これまで架けてあった「真善美」の額は、もともと青森高校弓道部にあったもので、諸般の事情で市弓連が管理していたのですが、今般青森高校に新しい弓道場が出来たことに伴い、返還されることになりました。

 この「真善美」の額は昭和29年に阿波研造先生の三大弟子と言われた神永政吉範士十段(号は的宗)が「真」を、安沢平次郎範士十段(同じく東宏)が「善」を、吉田能安範士十段(同じく紫鳳)が「美」を揮毫されたもので、弓道人にとって大変貴重なものです。

 この三先生は、この前年の昭和28年に青森高校弓道場が出来た際に、修祓式で射礼をなさった縁で、翌年揮毫の運びとなりました。ちなみに修祓式で矢渡しをされたのは千葉胤次範士です。信じられないようなビックネームが一堂に会したのです。

吉田能安先生(紫鳳)

安沢平次郎先生(東宏)

神永政吉先生(的宗)

 


画像はクリックすると拡大します。場所はまぎれもなく昭和の青森高校弓道場で、カメラアングルが同じなのでおそらく同時に撮られたものです。ただし修祓式の時のものではありません。昭和28年の修祓式時はまだ壁が板壁でこのような白壁ではありませんでした。「真」「善」「美」の額は昭和29年初秋に揮毫されていますが、先生方の服装からこの揮毫と同時か直後に撮影された可能性が高いと思います。

 

「真善美」に替わって架けられた「揮折八極」の額。阿波研造先生の書です。これまで師範室に保管してありました。号は見鳳になっています。見鳳は阿波先生が大正14年から昭和6年まで使われていた号です。これも大変貴重なものです。

 ただ残念ながら意味がはっきりわからないのです。「揮八極」なら中島敦の有名な『名人伝』の原典となった「不射の射」の故事の中にみられ、世界の隅々まで駆け回る、力を発揮するという意味のようなのですが、この額の方は「斥」ではなくて「折」になっています。以前私が先輩に教えていただいたところによると、これはあくまで自分の考えと前置きがありましたが、「己の固定観念や執着心を打ち破って真理を追究する」という意味ではないかとのことでした。

阿波先生の「一射絶命」とは程遠い私たちの拙い射ではありますが、この額を仰ぎ見ながら気持ちを引き締めて稽古したいと思います。